どうともならない
「そんな深刻なことでもない。もうとっくに分かってる。……そうだな、おまえみたいにきれいでかわいい嫁をもらえば、このどうしようもない感じはどうにかなるんじゃないか」
「おまえ、そんな他人事に──」
そこまで言いかけて、ジョルジュは口をつぐんだ。
ウェザイルは少しうつむいた。……酷い顔をしていたのかもしれない。
「おまえ……なんで、よりによって……」
友人はテーブルに頬杖をつき、顔をよそへ向けた。その横顔は、ひどく難しい。
──変な雰囲気になってしまったな。
ウェザイルは申し訳なく思った。同情を引こうと思っていたわけではないのだ。これはもうどうにもならないことだと、何よりウェザイル自身が理解している。同情されても、癒えるものなど何もない。ジョルジュの目には、自分が哀れっぽく映ったのではないか──
「……ジョルジュ、この話は他には……」
「他で話すわけないだろ……」
彼はこちらを見ない。怒っているわけでもない。不機嫌なわけでもない。ただ、ウェザイルの不運を嘆いているようだった。
「……心配だよ」
ジョルジュは顔をよそに向けたまま、言った。
「おまえ、生真面目だから。……今は物分りのいいこと言ってるけど、いずれ追い詰められるんじゃないかって。そのときのおまえを思うと、俺、すごく心配だよ」
「……」
ウェザイルは返事が出来なかった。
自分は絶対大丈夫だと、請合うことも出来なかった。自分で自分が信用できない。
だから、ウェザイルは当たり障りのない一言を言った。
「……ありがとう」
友人は、返事をしなかった。
ウェザイルは少し困って、取り繕うように笑った。
「それより、おまえの新婚生活の話を聞きたいな。夢のある話がいい」
「そんな話」
ジョルジュは眉を寄せて、不服そうな顔をする。こんな空気になった場で、のんきに話していられる内容か、という言外の非難があった。
「だからだよ」
ウェザイルは小さく肩をすくめた。
「聞いてて呆れそうになる話でも、夢があるほうがいい。ひとつ、結婚も捨てたもんじゃないって説得してほしい」
「おまえ……」
ジョルジュは何か言いたそうにしたが、やがて軽くウェザイルをにらむ目つきをした。
「聞いてて呆れそうになるってなんだ」
「人のノロケ話っていうのはそういうものだよ」
今度こそ、ウェザイルはおかしくなって笑った。友人も少し遅れて笑って、おまえな、と苦笑した。
to be contonued.
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