どうともならない
友人は考え込むようなしぐさで、腕を組んだ。
「それで済むんなら、さっさと手を出してるか。たぶん、まあ──あのベラムだから、抵抗とかしないだろう。むしろ、これも使用人の務めとかって、素直にやらせてくれそうだ。……って、おい、真っ赤になりすぎだぞ。おまえ、そんなにウブなのか」
「……そ、想像したんだ、ほっといてくれ」
深い深呼吸を繰り返す。情けないが、こればかりは自分の意志ではどうにもならない。
「ああ……これは末期だな……」
友人は気の毒そうにこちらを見つめる。
友人の言うように、ベラムはシメオン家に忠実だ。心身ともに捧げていると言っても大げさではない。そんな彼に、主筋にあるウェザイルが迫れば、彼自身がどう思うかはさておいて、謹んで体を差し出してくれるだろう。それはウェザイルも確信している。だが、それでは──
──過去の自分に、顔向けができない。
なんだか、そんな即物的な手段をとれば、自分の中で積み上げてきたものを冒涜するような気がする。それではだめだ。どうしても自分が許せない。
「でもなあ……そうだとすると……」
友人は難しい顔になった。それ以上口にするのも気が重くて仕方ないというように、言葉に窮して嘆息。
ウェザイルは頬に手の甲をあてながら、友人を見た。
友人は憂鬱な目をした。彼は察しているようだった。
「……おまえ、それはどうにもならないぞ。どこかで折り合いをつけないと。追い込まれる一方じゃないか」
「分かってる」
ウェザイルは友人の気がかりそうな視線を受けて、安易に笑った。
「……分かってるんだ。だから、もうどうするつもりもない。どうにもならない」
由緒正しいシメオン家に生まれた以上、これはどうにもならない──彼を囲うつもりがない限りは。
「どうするつもりもないって……じゃあ、ずっとそのままか。おまえ、それはさすがに──きついぞ。頼みこんで、一発やらせてもらえよ。それか、囲えばいい。男の愛人だって、そう珍しくもないだろ。ほら、エンブル家のオヤジとかピロット家のバカ息子なんかは正妻ほっといて、男の二号三号ばっかりだぞ」
口の悪い言い方だが、この旧来の友人が自分のことを考えてくれているのはわかる。折り合いをつけるには、彼の言うような方法が一番建設的だ。だが、やはりそれも──
ジョルジュは両手を広げて、肩をすくめた。
「それもだめか」
「そうだな」
ウェザイルは彼に大したことはないと示したくて、明るく笑った。