「……シャワー浴びるか」
 え……?
「べたべたや」
 ……それは、そうですけど。
 でも、それじゃあ……
 俺は、半身を起こして、かすれた声で言いました。
「とうじ、さんは?」
「……ああ?」
「……藤次さんは、?」
 思わず、俺は藤次さんの股間に視線を向けました。
 そこは、確かに反応を見せているのに。
 どこ見てんねん、と藤次さんが股間を隠します。
「そらおまえ、あんなん見せられたらここも元気になるわ。俺もまあ、途中までヤる気満々やったしな」
 ぽりぽりと、藤次さんは俺の精液で汚れていないほうの手で額をかきました。
「でもなあ」
 でも、なんですか。
 ……俺が嫌なんですか。
「っあ、いや、その顔やめろ。おまえの考えてるようなことちゃう」
 藤次さんは、俺の頬に手を添えて、目元をぬぐうしぐさをしました。
 カチャ、と黒縁眼鏡のフレームが触れ合って音を立てます。
「……その、なんや、まあ」
 藤次さんは、非常にいいにくそうな顔をして──
 ぽつり、と続けました。
「なんや、今のおまえ壊れそうやから。段階踏んで、ならしてからにしよ思うて」
「そんなの」
「おいおい、だから、そないな顔すんなて……」
「そんなのいやだ」
 俺は壊れないし、
 そんなに弱くないし、

 何より、俺はこの人になら、されてもいいと思ったから、天井の夕焼けを見るのはやめたんだ。

「俺、……藤次さんと、」
 唇を湿らせて、じっと眼鏡のレンズから藤次さんを見つめました。
 藤次さんが、俺の顔を食い入るように見つめています。
 藤次さんの喉が、かすかに動きました。
 俺は、長く息を吐きながら、足を引いてテーブルの上に立てました。
 震えそうになる両足を叱咤して、股を大きく開いて見せます。
「っ、……」
 何か言おうとしましたが、ひゅっと息が喉に詰まってうまく喋れません。
 俺はおずおずと自分の手を、肛門に伸ばしました。
 この人を思って自分を慰めたときの気持ちがよみがえって、いたたまれない気持ちになりました。
 でも今回は、違います。
 俺は、慰めてほしいんじゃなくて──

 この人に、自分を犯してほしい。
 ここに他の男のものをくわえ込んだ過去を終わらせるために、犯してほしい。

「浩之……」
「っ、俺、」
 指を、ゆっくりと中に沈めます。
 自分の指なのに、かすかな恐怖を感じました。
 その怖い思いを押し込めるために、俺は藤次さんの顔を見て笑ってみせました。
「…だ…、誰かの、お古なんて、嫌かもしれませんけど……?」
「ええ加減にせえよ」
 藤次さんの抑えた低い声がして、肛門をいじっていた手をとられました。
「っ!?」
 急に視界が反転しました。
 強引に足首をつかまれて、さっきと同じように腰を持ち上げられてテーブルに押さえつけられます。
 その勢いで、性器にこびりついていた精液が散って、眼鏡のレンズを汚しました。
「誰がお古やて?」
 グッとひざの裏から、強い力で押さえつけられます。
 尻が開かれて、肛門を晒すような格好です。
 藤次さんに見られていると思うと、無意識にそこがひくひくしてきて、たまりません。
「っ……、藤次、さ……、ここ……」
 俺は背中から腕を回して、自分の手で尻肉を引っ張って、肛門を一層よく見えるようにしました。

 とにかく、ここに、

 ここに、

「ひぁっ!」
 藤次さんが俺の肛門に舌を這わせます。
 熱くてぬるぬるした感触に、思わず悲鳴をあげてしまいました。
「っん、んっ……、そ、そんな、そこ、きたな……っ」
 藤次さんの舌が、しわを一つ一つ丁寧にねぶります。
 そんなところ、舐めるところではありません。
 俺は、別に、舐めてほしくて、お尻の穴を見せ付けたわけじゃ……。
「っん、ひっ……、んんっ……」
 熱くて、ぬるぬるしてて、……ぞくぞくして、なんともいえない感覚がします。
 ぴちゃぴちゃという唾液の音がひどく淫猥で、否応なく熱がまた中央に集まってきてしまいます。
 薄目を開けてみれば、俺の性器はまた硬くなっていて、その向こうには藤次さんの顔が見えました。
 この体勢だと、俺の肛門を舐める藤次さんの様子が見えるのです。
「と……藤次さ……、」
 藤次さんは、かすかに眉を寄せました。

 まさか、
 まさかそんなところ。
 吸ったりなんか、

 俺は咄嗟に首を横に振りました。
「藤次さ、…ま、待って、待っ」
 俺の制止もむなしく、藤次さんが大きな音を立てて、肛門をきつく吸い上げました。
「っひ! ああ……!」
 ビクンと身体が痙攣した拍子に、投げ出された自分の性器から、先走りの液が零れ落ちます。
 その零れ落ちたものが、眼鏡を汚して視界を歪ませました。
「ひぃ……、ひぃっ……、」
 せわしない呼吸を繰り返していると、藤次さんの口が肛門から離れました。
 そしてそこに、つぷり、と指が滑り込んできました。
「っんん……!」

 あ、あ、指……、
 指……っ、入ってくる……

 思わず、眉を寄せて目をきつくつぶります。
「ガチガチやないか……、浩之、ほんまに」
「っだ、だいじょうぶ、だいじょうぶです、から」

 もっと。早く。
 指を入れて、かき回して。

 藤次さんの指が、俺の中で動いています。
 ぐちゅぐちゅと、恥ずかしい音をたてながら。
 肛門を押し広げるようにされて、俺は頭を振りました。
「っああ! っ……!」
 その押し広げられた入り口に、更に指が入ってくる感触がしました。
 すり上げられるように中をかき回されて、俺は思わず、テーブルに爪を立てます。
「あ、あ! は……っ」
 頭が混乱して、もう何も分かりません。
 肛門が引っ張られるような感覚がしたかと思うと、くちゅくちゅ、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が大きくなりました。一体、何本の指が自分の中に入ってきているのか分かりません。
 身体が揺れるたび、ビクビクと震えるたびに、硬く勃起した棹の先から、汁がこぼれて顔や眼鏡を汚していきます。
 落ちてくる汁は、熱くて、生々しくて、俺はますますたまらなくなりました。

 体中が、疼いて疼いて、

 ただもう、もう、

「とっ、とうじ、さん……、とうじさんっ……も、もお、おねがっ……おねがいっ……」

 早く、この緩みまくったこの尻の穴に、早く。
 熱くて、太くて、硬いもの。
 あなたの。







サイト 次へ
作品が気に入られましたらクリックしていただけるとうれしいです→