どうともならない



 半笑いのウェザイルの前で、ジョルジュは緩みまくった顔で新妻の自慢を続けている。寝顔がかわいい、時々間の抜けているところがかわいい、冗談を言うと間に受けてすぐ真剣になるところがかわいい、怒り方も子どもみたいでかわいいだの、壁に向かって話してろといいたくなるような内容ばかりだ。

「俺の話ばっかりだけど、そういえば、そっちはどうなんだよ」

 突然話を振られて、ウェザイルはジョルジュの顔をまじまじと見つめた。ジョルジュは、なんだ気持ち悪いな、と怪訝な顔になった。

「さっきから俺が話してるばかりだろう。そっちはどうなのかと思って」
「どうって」

 自分ばかりがノロケ話をしているという自覚はあったのか、とウェザイルは心の中で半笑いした。

 ──しかし、どう、と聞かれても。

 ウェザイルは腕を組んで、思い当たる節に思いを馳せた。思いを馳せてから、いやいやと頭を振った。これは、さすがに口にはできない。

「特に話すようなことはないな」
「ふうん?」

 ジョルジュはテーブルに頬杖をつき、ウェザイルを探るように上目遣いに見た。ウェザイルは眉間に皺を寄せて、その視線を避ける。

「探っても何もない」
「おまえ、不思議だなあ」
「不思議?」
「そうだよ。不思議だよ。……顔もいいし、教養もあるし、まあそれなりに気遣いも出来るのに、どうして浮ついた話が出てこないんだ?」

 そんなことを真面目に尋ねられても困る。
 しかし、ジョルジュは本当に不思議そうだ。

 ウェザイルとジョルジュは親しい間柄でよく遊びに行ったりもしたが、好みの女を見れば、手を出す出さないは置いておいてもすぐ声をかけるジョルジュとは違い、ウェザイルはあまり女に声をかけることがない。どこかの屋敷で夜会に呼ばれても、踊るのは義理の数曲ぐらいで、社交辞令で女をダンスに誘うことはしてもラストダンスを誰かと踊ったことはない。だが、ジョルジュの言うとおりに、女性受けはいいから、引く手はあまただ。女のほうから声をかけてくることも多い。
 確かに、ジョルジュでなくても、ウェザイルに浮ついた話がないのは不思議に思うだろう。







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