愛され執事とノロケ話



 ウェザイルが抑えた声で、ああ、とうめいた。

「……いつもそうしてくれたら、いいのにな……、ベラムから……触られるだけで……」

 言いながら、彼は呼吸を荒くして、ベラムの硬く勃起したものを手のひらで包み込み、先ほどとは打って変わった激しさで上下にしごいた。

「あ、あ……! ウェ、……様……っ!」

 唇を噛み締めようとして、呼吸が喉に詰まった。えづいた拍子に、自ら課した戒めが緩む。その戒めの隙間から、圧倒的な勢いで、見知った感覚がせりあがってくる。
 ベラムは、ウェザイルの首に回した腕に力を入れた。あふれ出すそれを我慢しようと眉を寄せたが、無駄な抵抗だった。
 もう止められない。あふれて、噴き出してしまう。こぼれてしまう。

「あ、あ……、ああ……!」

 びゅくっ、びゅるっ……!

 硬く勃起した陰茎の先から、びゅるびゅると勢い良く精液が噴き出す。どろりとした熱い感触が、腿の内側、尻の隙間を伝い落ちた。

「ああ……」

 ウェザイルの服を汚してしまう。頭の片隅では分かっているのに、吐き出した快感が大きすぎて、思うように体が動いてくれない。ベラムは荒い呼吸を繰り返しながら、ウェザイルの服をつかんだ。力の入らない手で、彼のシャツに触れて唇を震わせる。それだけで、ウェザイルはベラムが何を言おうとしているのか、察したようだった。

「……汚したとか、どうだっていいよ」

 ちゅ、と音を立ててウェザイルはベラムの眼鏡に唇をあてる。唇に唇を寄せられる気配がして、ベラムがわずかに唇を開けば、ウェザイルの唇が重なった。熱い舌が入り込み、上あごをなぞるようにくすぐる。

「っん……! ……ん、」

 舌を強く吸われるとくらくらと眩暈がする。視界も思考もぼんやりとして、何も考えられない。

「ん、……ふ……、ぅ……」

 ウェザイルの腰に絡み付かせた足から力が抜けて、ずり落ちそうになる。それをウェザイルがしっかりと抱えなおす。

「……おれでいい……?」

 ウェザイルの顔が耳元に寄せられて、かすれた声で尋ねられる。耳朶をくすぐる熱い囁きに、ベラムは言葉にならない吐息をもらした。ウェザイルは、それを返事と受け取ったようだった。
 彼はベラムの身体を扉に押し付け、身体を寄せた。
 かすかな金属音が荒い呼吸の合間に聞こえた。ベルトのバックルが触れ合う音だ。
 衣擦れ音がしたと同時に、ウェザイルの両手が、ベラムの尻を左右から包み込むように支えた。肉を左右から引っ張り、肛門を広げるようにする。

 ああ。

 ベラムはたまらなくなって、ウェザイルの首筋に顔を埋めた。頬が熱くなるのを恥じて、ぎゅっと彼にすがりつく。
 ベラム、とウェザイルの抑えた声がする。その声は、上ずっている。興奮しているのは明らかだ。

 ……この老体でもいいと、この方はいう。

 確かに上ずった声、興奮した荒い呼吸。本当に己の老体で事足りてくれているのだろう。奇跡的だ。夢ではないのだろうかとも毎回思う。
 ゆっくりと、しかししっかりとウェザイルの手に腰を支えられながら、体が沈む。硬い切っ先が窄まりに押し付けられたかと思うと、ぐぬ、とそのまま押し入ってくる。
 ベラムは、声にならないかすかなうめき声をあげて、頭を振った。

 入ってくる、この圧倒的な。
 太くて、熱い、硬いこの。

「っぐ……! っぁ……!」

 容赦なく硬いものが入ってくる。入り口の周りがピリピリと痛みを発し、ベラムはウェザイルの背中に爪をたててすがりついた。

「っ、あ…あ…! う、ウェザイル、さまっ……」

 以前、身体をつないだときよりも、ウェザイルの陰茎が太く大きく感じる。痛い、と口走りそうになって、ベラムはウェザイルの首根に腕を回しながら、自分の指を噛んだ。

「っぐ、……いっ、……ああ……!」

 裂けそうに激しい痛みに身体を反らせると、ウェザイルの大きな手のひらが背中に回された。

「べ、ベラム、……も、もう少しだけ、我慢して……」
「は、…あああっ……!」

 これ以上進められると裂けてしまうのではないかというところで、ずぷん、と張り詰めていた感覚が緩んだ。入った、と達成感を味わうより早く、ぐぐっとさらに太い陰茎が中に押し込まれる。
「あ、あ……! あっ……! こ、こんな、……ああ……っ!」

 ずぷずぷと硬いものが埋め込まれていく。入ってくる感覚に、ベラムは耐え切れずに眉を寄せて、あられもない声を上げてしまう。

「ベラム……、もう少し……だけ……!」

 尻に柔らかな陰毛の感触がした。奥の方で、熱せられた棒が息づいているのを感じる。

「っは……、は……っ……」

 浅い呼吸を繰り返す。中の重量感に、眩暈がする。自分の中に、誰よりも慕うウェザイルの一部があるというだけで、たまらない気持ちになる。切なく、痛々しい、哀れな。

 ──お慕いしている。

 彼が心の優しさを見せるたびに、息苦しくつらい思いをする。どこにも逸れることなく、ましてや捻じ曲がることもなく、立派に育った姿を見るたびに、心をざわめかす。彼の責任感の強さも、要領の悪さも、すべてベラムを苦しませる。使用人の立場以上に、昼夜問わずに彼のことを案じてしまう──
 ベラムは、ウェザイルの腰に絡めた足に力を入れた。抱きつくように体を寄せると、内部のウェザイルが大きく硬くなって、中を突いた。その刺激に、ひくりと彼の根元を締め付けてしまう。

「っ……ベラム……」

 ウェザイルがつらそうに顔をしかめた。両手を扉について、ベラムの顔をすがるような目で見る。ベラムは目を細めて、彼の頬に触れた。……手袋をせずに、彼の肌に触れるのはこのとき以外、ほとんどない。昔は──彼が幼かったときには、熱を確かめるために直接額に触れたことはあれど。
 頬に触れれば、彼は何か言おうと眉を寄せた。多分、それは懇願だ。彼のような立場からなされるには、あまりに不似合いな。それを、ベラムはかすかに笑って封じた。

「……良う御座います」

 ──あなたのお好きに。

 ウェザイルはかすかに頭を振って、ああ、と搾り出すように嘆息した。そしてそれから、彼は、耳元でごめん、と必要のない謝罪をして、ゆっくりと身体を引いた。

「ッ……!」

 ずるり、と中のものを引き連れるようにして、埋まっていた杭が退かれる。はしたない喘ぎ声を漏らしそうになって、ベラムは声を押し殺した。
 一刻の猶予もなく、再び、熱くて太いものが入ってくる。

「っん……ぐ……!」

 窺うようにゆっくりと突きたてられて、内臓を焼くような熱いものがじわじわと沸いてくる。切ないような、もどかしいような、たぶん、快楽に数えられる感覚。ひどく、被虐的な気分になる。












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