愛され執事とノロケ話



「ベラム……? 痛くて、我慢できなかったら、言って」

 ずぷぷ……、とゆっくりと奥まで穿たれる。肛門がいっぱいに広がっているのが、張り詰めた感触で分かる。一つバランスを崩せば、何もかも破れてしまうような、そんな危うさ。中に息づいた彼のものが、脈打つのすら感じ取れるような気がする。それがまた背徳的な気持ちを煽って、ベラムを酩酊させる。
 本来なら許されるはずのない快感。罪深さに酔う。

「ああ……、きつい……、すごく……」

 ウェザイルがうわごとのようにつぶやく。その声は低くかすれて、ベラムの耳に焼き付いて離れない。押し込まれたそれが、さらに硬くなったのを感じて、たとえようもない気持ちになる。
 この老いた身体で、心乱してくれるのならば。
 無意識のうちに、ベラムはくわえたそこを締め付けた。ウェザイルの整った顔が、耐えるような顔をする。

「……、ベラム」
「も、申し訳、……そ、んなつもりは、」

 ただ、あなたが気持ちよさそうにするから。
 ベラムの謝罪を、ウェザイルは眉を寄せた笑みで制した。

「だから、なんで、……謝るかな。もう少し、……踊らせて」
「それは、……っ、あ、……!」

 ぐちゅ、と濡れた音をたてながら、太いものが縁を擦りながら退く。体の中をかき乱される錯覚に、ベラムは喉をそらした。

「ベラムの……、勃ってるから、……悪くはない、ってこと、でしょ」
「っ、ひ、……い……っ!」

 ずぷっとさきほどよりも勢い良く、硬いものを突き立てられる。ずん、と奥に響くほど深く突き上げられて、頭の芯がびりびりと震えた。思わず天井を振り仰ぐと、後頭部が硬い扉に当たった。

「ベラム……、本当……、おれ、こんななのに、」
「っあ、あ、あ……!」

 ずるりと、また身を引かれる。抜かれるときがたまらない。すべて持っていかれるような、狂おしい感覚に溺れてしまう。自分を見失いたくなくて、ベラムはウェザイルにすがりついた。何も考えられなくなってしまう。これを続けられると。
 ぐぷ、と濡れた音がした。限界まで引き抜かれたものが、また勢い良く入ってくる。

「ぐ、っ……! っああ……!」

 奥まで一気に貫かれて、ベラムの体が浮いた。身体をのけぞらせれば、背にした扉に当たって、ひどく軋んだ。

「はっ……、あ……」

 再び抜かれるのを予感して、ベラムは両足をウェザイルの腰にきつく絡ませた。狂わされてしまう感覚が怖かった。

「っベラム……!」

 ウェザイルが息を呑んだ。
 罰だと言わんばかりに、奥までいっぱいに突きこまれた陰茎が、また引き抜かれる。入り口が擦り上げられるたび、ぞくぞくした快感がつま先から頭の先まで駆け抜けて、ベラムははっきりと泣いた。

「あ、ぁ……ぁ……!」
「気持ちいい……?」
「っ……、」

 熱い声で尋ねられても、そんなはしたないことを答えられるはずがない。
 気持ちがいいかそうでないかは、股間の様子で分かるはずなのに。改めて確認しないでも、腰の奥のほうが疼いて疼いて、たまらないのに。
 あられもない声をあげて、ウェザイルに眉をひそめられるのが怖い。この関係に後悔を覚えられるのが怖い。
 分かってたけど、とウェザイルは小さくつぶやいて、再び深く、腰を突き上げた。

「っあぐ……!」

 硬い切っ先が、鋭く奥のほうを突く。深くくわえ込んだ入り口をいじるように、一度深く突き上げてから、何度も熱く突き上げられる。その拍子に、たまらないところをえぐられて、ベラムはつま先を引きつらせた。

「……っああ!」
「ここがいい……?」

 こともあろうに、ベラムが反応を示したそこを、ずんずんとウェザイルは容赦なく突き上げた。

「っいっぐ……、っああ! ああ! やっ……」

 涙が散る。ずぷっ、ぐぷっとくぐもった音が、下のほうから聞こえてくる。硬いもので弱い部分を強くえぐられ、ベラムは耐え切れずに吠えた。

「っひぐ、そ、そこ、そこはっ……、ああっ! やっ、……ああ!」

 何度も何度ものけぞるような快感が突き抜けていって、何がなんだか分からなくなる。視界は歪んで、言葉も覚束なくなる。口を閉じることすらかなわず、開いたままの唇から、唾液が伝い落ちた。

「っや、……いけま、いけません、もっ……」

 嫌だ、嫌だと頭を振る。これ以上突かれたら、壊れてしまう。戒めていたいろいろなものが壊れてしまう。

「やめて、ほしい……、?」

 途切れ途切れに、かすれた声が耳元で尋ねる。
 その言葉の端々に、すがるような色が見え隠れしているのを感じて、ベラムは強く目を閉じた。やめてほしい、と口にすれば、きっと彼は無理やりにでもこれをやめるだろう。あのよくない笑い方をして。
 やめてほしいなどと──言えるわけがないのだ。
 受け入れられない行為であれば、最初から踏み出さない。罪深さに苛まれながら、それでもこの方に触れはしない。何より──
 体の奥底の、戒めていたものが悶えて我慢できない。

「あ、……」

 何かを言おうとした。だが、何を、どういえばいいのか分からない。ただ、やめてほしいとは言いたくない──












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