愛され執事とノロケ話



「っあ……! っは……! やっ、……そっ、ご無体な……ッ」

 突っ込まれたまま、揺さぶられてさらに奥にねじ込まれる。これ以上奥までは入らない。それなのに、小刻みに揺らされて、頭の中が焼ける。
 大きなうねりが体の奥から沸いて、押し寄せてくる。言葉をつなげることも叶わずに、ただただ声をあげる。

「っあ、ああーっ、ああー……っ、も、もう、いっ……」

 これ以上は我慢できない。疼きははっきりとした痛みになって、ベラムを苛む。

「は……! ウェザイ、ル様、もっ……」
「もう出そう……?」

 尋ねられて、ベラムは何度もうなずいた。次に大きく突き上げられたら、たぶん、こらえきれずに出してしまう。揺らさないで欲しいと抗議の意味を込めて、彼にすがりつく。

「……うん、……出していいよ……!」
「っえ……、あっ、あああ! まっ、…そんなっ……! ひ、……いっ、いけませっ、いけませんっ……! あっあっあ……!」

 大きく突き上げられた拍子に、反り返った先から、ぴゅ、と白濁したものがこぼれた。せきとめようと下腹に力を入れたが、もう遅い。一度こぼれたものは、さらに腰を突き上げられる動きに合わせて、ぴゅぴゅ、とこぼれ出る。

「あっ……あっ……!」
「……かわいい……」
「ぁっ……!」

 抱き寄せられて、ベラムは力の入らない手を彼の肩についた。体を密着させるようにかき抱かれる。服を汚してしまう、と乱された思考で思った。だが、それも一瞬の余裕でしかない。抱き寄せられたとたんに、内側の浅いところを猛ったものが当たって、ベラムは背中をそらした。

「っああーっ! あっ! そ、そこはっ……」
「……ここがいい……?」
「ひっ……、あっあ、もっ、あ、っ、ああああーっ!」

 びゅくっ、びゅくっ……!

 頭の中が真っ白に焼ききれる。勢い良く、白濁したものが噴き出す。痛い。痛いのに、もう止められない。

「あっあ……」

 びゅくびゅくと陰茎を震わせ、噴き出した快感に酔いしれる。無意識に余韻を味わって、身体を弛緩させた隙に、中に埋め込まれていたウェザイルのものが熱いしぶきをあげた。

「っあ!? ああ……! っは……!」

 不意打ちのような形で熱いしぶきを味わって、ベラムはゆるゆると頭を振った。腹の中が熱くて、たまらない。

「っあ……、あ……」

 ぐったりとした身体を、ウェザイルが抱きとめる。中に挿したままのものを、ずるりと引き抜かれて、ベラムは背筋を奮わせた。ごぷ、と生暖かいものが垂れ伝い落ちる感覚に生々しい気持ちになる。

「……ぁ…ぁ…」

 わなないたベラムの唇に、ウェザイルは唇を押し付けた。なだめるようなキスを何度もされて、ベラムは目を閉じた。ウェザイルの唇は熱かった。

「ウェザイル様……」
「ん」

 ゆっくりと目を開くと、ウェザイルが嬉しそうに笑った。
 ベラムは、ああ、と少し笑った。この方の、この笑い方は好きだ。何より、安堵できる。
 ベラムは彼の両肩に手を置いて、彼を見つめた。

「ウェザイル様、……辛う御座います……、降ろして、いただきたいのですが……」

 よく考えれば、この体勢はかなり恥ずかしい。まるで、小さな子どもが大人にしがみついているような図だ。五十も過ぎて、これでは体裁が悪い。

「……ん、……うーん」

 ウェザイルは難しい顔をして考え込んだ。

「……やだ」
「は」
「やだ」

 何を言っているのだろう、この方は?
 ベラムは眉を寄せて、不可解な表情をした。
 ウェザイルは何故か、むくれた顔をする。……顔が整っているだけに、なんだか気味の悪い光景を見ているような気もする。

「ピロートークしたい」
「…………」

 ベラムは眼鏡のフレームに指をあて、目を閉じた。感じ入っているのではない。呆れていた。

「ウェザイル様。……そもそも、わたくしは採寸をしにここへ来たのです。それが、こんな……ええ、その、……確かめ合う形となって……、ミラルが……」
「でもベラム、正直体辛いじゃん」

 歳だから、と余計な一言を付け加えられて、ベラムの眉間に皺が寄る。さすがのウェザイルも失言に気づいたらしく、あわてて訂正する。

「お、おれが無茶やったから辛いんじゃないかなって」
「左様です。わたくしはそんなつもりは毛頭……、っ……」

 バランスを崩して、ウェザイルの肩をつかむ。ピリ、と下のあらぬところが痛みを発する。注ぎ込まれた精液が冷たくなって、なんとも気持ちが悪い──ひくひくと無意識に収縮するのも浅ましい気持ちがしていただけない。
 大体、下半身裸のままだ。なんて格好を晒しているのだろう。

「とにかく、降ろしてください。……その」
「一緒に風呂」
「いけません」
「なんでー」
「使用人とご入浴されるなど、もってのほか。そもそも、……ん」

 唇を塞がれた。舌を絡められて、言葉を失う。ちゅ、と音を立てて唇が離れたと思うと、そっと下に降ろされた。床に足をつけたのはいいものの、思った以上に力が入らなくて、かくりと膝が折れる。よろめいたベラムの身体を、ウェザイルの腕が支える。

「ほら、言ったじゃん」

 なんでそうなのかなあ、と言いながら、ウェザイルがベラムを横抱きに抱えあげた。

「っ、ウェザイル様!」

 ウェザイルはベラムの背後にある扉を開けた。そのまま抱きかかえられて、寝室のベッドの上まで運ばれる。

「お、お待ちください、わ、わたくしは随分と、その、……汚れていまして」

 だからベッドの上に降ろされるわけにはいかない。シーツを汚すわけには。

「え? ごめんよく聞こえない」

 わざとらしく聞こえないふりをされた。彼は、その端正な容姿に反して、砕けた物言いをする。他の使用人や、身内がいるときはその身分にふさわしい言葉遣いと態度になるというのに。
 これは、幼少時からそばで控えていた自分に対する、気安さの表れなのだろうか──
 まるで壊れ物を扱うみたいに、柔らかなベッドの上に降ろされて、ベラムはなんとも気恥ずかしい気持ちになった。あいまいな表情を見て、ウェザイルが小首をかしげる。

「何」
「ウェザイル様は少々、この年寄りに対して分不相応な扱いをしがちでは……」
「うーん、そう?」

 ウェザイルは軽く笑って、ベッドに膝をついた。そしてそのまま、顔を近づけてベラムの額にキスをする。

「でも、誰からも文句が出てないから、問題ないよ」

 額から眼鏡のフレームへ。ウェザイルは、眼鏡のフレームの、一番出っ張った部分に唇を寄せた。












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